國村 隼.尾野真千子.和泉幸子.柴田浩太郎.神村泰代.向平和文.山口沙弥加 他

定価: ¥ 3,990
販売価格: ¥ 2,953
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発売日: 2007-09-25
発売元: バンダイビジュアル
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喪失と無常
ひとつの家族の朝の光景がはじまる。 釜戸のある土間、やがて朝の食卓が、丸いちゃぶ台に揃う。
開け放たれた障子と窓の向こうに、視界を遮るものなく悠然と緑の山肌が見渡せる。
家族は常にこの風景と共に暮らしている。
しかし、この映画の家族の静かな暮しは、過疎という時間の進行からも、やがて解体へと進むのだが。
台詞が抑制され、物語は極端に感じられる寸前まで説明描写を避けて省略の形をとっている。
そのぶん観客は集中力と静かな観察眼が必要だ。己の雑念を排して映画を凝視していなくてはいけない。
「省略」がとっても大好きなぼくも、この登場する家族の関係も、時間の経過も、読みとり、想像力でついていくのに、ちょっと労を要した。
しかし、物語は元来曖昧なままで観続けていて良い場合も多い。はっきりと説明されるものであれば、映像として感じとっていく観客の力はいらないだろうから。
音の繊細さ脆弱さ、物語が寡黙な表情で語られるようなフイルム映像を堪能するには、静かな環境がこちらも必要だ。
ドキュメンタリーを思わせる感触ではじまるのだけれど、やがてひとつの家族の物語が愛おしく大切に語り終えられていくのを感じる。
やがて不在となる父親、不在その後のそれぞれの家族の、その思いが静かで悲しくて、解体していく家族のかたちが儚くて、とても切ない。それは「無常」という思いの姿、域までも感じさせる。
思えば、この映画の描く喪失感にも、静かに耐えていくような、おばあちゃんの姿も心に残る。
そうだ奈良を撮ってみよう
カンヌ映画祭で女優の尾野真千子より目立つ衣装を着ていた河瀬直美を見てきっと反感を覚えた人も多かったことだろう。この女流監督、日本での評価はイマイチだがなぜかカンヌでの受けがいい。初出品で新人賞をとった本作品を見てみたが、はっきりいって感想は?である。
あまりにもローカルな内容は個人的な<奈良への思い入れ>のみで成立しており、奈良以外に住む人々にとって愛着を感じることは難しい。素人に近い俳優を使ってネオリアリズモ的演出を狙ったのだろうが、なまっている上に滑舌が異常に悪いため何を言っているのか聞き取れないのだ。
この映画には、登場人物がトンネルを通り抜けるシーンが数多く登場する。過疎化の進む山村と外界をつなぐトンネルに通るはずだった鉄道敷設計画が頓挫し、それが原因でみちる(尾野真千子)の一家は離散を余儀なくされる。いわばトンネルの先には、みちる一家の<希望>があったはず。父親の失踪後、映画はラブストーリーへと中途半端に転回してしまったために、トンネルのシンボル性がすっかり薄まってしまった。
守るべき故郷の自然と鉄道開設による開発が相反するベクトルとして通常描かれるところを、地元民の立場になって過疎化の防波堤(朱雀)として捉えたところまではよかった。しかし、それでは一般観客のシンパシーを得られないことに河瀬直美は気づかなかったようだ。
カンヌ・カメラドール受賞作
この映画の魅力については、いろいろと評価されているのですが、最初見たときは、何と地味な映画なんだろうか、という感想でした。
すべてが、真面目に作りました、という感じで、派手なところが、一切ない。
おまけに、筋立ても一回見ただけではよく分からない、という構成に最初はやや戸惑いました。
しかも、役者はほとんどが素人で初々しく、録音は独特のオフ録音感覚。
ただ、観た後に何かが確実に、心に残る映画であることは確かで、映像の一コマ一コマが予感のように残りました。
このささやかな残り火のような感慨はいったい何だろう?とずっと考えながら、この監督の作品を追ってきました。
そして、先日、映画館で話題の「殯の森」を見ました。
この映画は結論から言えば、まさに現代では異質の傑作で、河瀬監督の「作家の魂」というものに深く心を揺さぶられる思いがしました。
デビュー作である本作に比べると、「殯の森」の映像の密度は比較にならないくらい濃厚で、録音も自然の音が生き生きと蘇るような生気を持って素晴らしいものでした。
役者は「役」という枠組を超えて、すでに映画の中に人物を生きている。
しかし、考えてみれば、すべては「萌の朱雀」で萌芽として露わになっていたんだ、と初めて気が付きました。
河瀬映画の「はじまりの映画」として、この「萌の朱雀」は、やや分かりにくい部分が確かにありますが、その映像の奥底を流れる「たましい」はやはり揺るがないものがある、と強く感じました。
それから、第三者として感じたことですが、読んでいて不愉快な中傷と作為ではなく、貴重なエネルギーは好きな映画のために使いませんか。